家の誰かが亡くなったあと
庭にその人が大切にしていた花が満開に咲き誇ったとか、木の実がたわわに実った
という話を耳にすることがある
私の父が亡くなった年
大輪の、それはそれは美しい芍薬の花が、次々に咲いたのだ
気品のある透き通るような淡いピンク、
ため息が出るような鮮やかな濃いピンク、
妖艶で神秘的な赤紫、、、
「わぁ!見事だね!」と、母と2人で思わず声をあげてしまうほどの美しさ
どれも光り輝くようなオーラを纏い
自らの花の重さに耐えながら咲き誇り、そして散っていった
明らかに例年とは違う咲きっぷりに、亡くなった父との関連を考えずにはいられない
でも、、、なぜシャクヤク⁇
生前の父からは想像もつかないゴージャスな花
父はどちらかと言えば
花よりも庭の一角に作った家庭菜園で野菜を育てる方が好きだったし・・・🤔
一応、花言葉を調べてみると
「恥じらい」「はにかみ」「誠実」「怒り」など・・・
えっ⁉️・・・「怒り」!?😱
気になって仕方ないのだが
結局よくわからないまま、3年余りが過ぎた
毎年、実家の庭の芍薬は花を咲かせているが、あの時ほどの豪華さは見られない
ところが最近、遠方に住む妹と母との会話から
「なるほど!そういうことか!💡」と
納得の理由が浮かび上がった
久しぶりに実家に帰って来た妹が
「これ、お母さんにインタビューして書いてみる?」
と言って荷物から出したのは、いわゆる『エンディングノート』だった
親のお金のこと、いざという時の延命治療、理想の葬儀は?など
聞けるうちに本人の意思を確認しておくことはとても大切なこと
いきなり財産や葬儀の話はしにくいが、ノートは極々簡単な質問から始まっており
「好きな花は」
「えー何かなぁ」と考え込む母に、妹が言った
「お母さんはシャクヤクでしょ。前にお父さんから聞いたよ」
えっ?うそ!本当に?
出た!
なんと芍薬は父ではなく
母が好きな花だったのだ
真面目で、派手なことは嫌い。優しいけどまあまあ頑固…だった父
母の一番好きな花を庭にたくさん咲かせて
一人になった母が寂しくないように、という計らいなのか
長年連れ添った母への感謝を伝えたかったのか・・・
父が亡くなる前後はコロナ禍で帰省もままならず
妹はあの時の芍薬の花を見ていないのだが
電話で私から話を聞いた時にそっと気づいて、父母への思いを馳せていたらしい
あの時、庭に咲く見事な芍薬の花を見て
母もこっそり父の思いを感じていたのかもしれない